たいやき ともえ庵では20206月~7月の月替りたいやきとして「梅干白玉たいやき」を出します。

 梅干しとたいやきのとり合わせ、まったく想像がつかないと思いますので、詳しく説明させていただきます。

梅干たい焼き写真2


■「梅干白玉たいやき」とは?

 梅干白玉たいやきは、名前のとおり、梅干が入ったたいやきなのです。ただし、多くの方の想像とは違ったものです。

大半の人は、「梅干+白玉たいやき=梅干白玉たいやき」だと思われているはずですが、少し違います。また、「梅干+白玉+たいやき=梅干白玉たいやき」でもありません。

正解は「梅干白玉+たいやき」です。

白玉に梅干を練り込んだ「梅干白玉」を作り、それをたいやきに入れて焼き上げたのが「梅干白玉たいやき」なのです。

 

■梅干とつぶあんは合いません・・・でも白玉を入れるとまったく変わります

 梅干しの酸味と塩味をつぶあんに合わせたら面白いのではないか、そう考えたのはかなり昔のことでした。何度か試作したのですが、残念ながらつぶあんと梅干の風味がケンカしてしまい、まったく美味しいものを作ることができませんでした。

 他店でたい焼きに梅干を入れられている店があるのは知っています。(そのお店が梅干が入っていることを秘密にされているので名前は伏せています)なので、つぶあんと梅干がまったく合わない訳ではないのかもしれませんが、少なくとも当店の甘みを抑えたつぶあんには梅干は合いません。配合を変えたり、混ぜ方を変えても無理でした。

 

 ところがふと思いついて、白玉に梅干を混ぜ、「白玉たいやき」と同じように焼いてみたところ、これが美味しい! ほのかな酸味と塩味、そして梅の風味が感じられる白玉が存在感を増し、それがつぶあんにぴったり合うのです。梅干し入りの白玉につぶあんを添えてそのまま販売したいくらいです。

 そんな訳で「梅干白玉+たいやき」の梅干白玉たいやき、自信をもってお楽しみいただける味に仕上がっています。

 

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■「幻の梅」に近い珍しい梅干を使っています。

 梅の品種といえば、和歌山県のものが知られています。生産量、流通量も多く、梅干も様々な味のものが開発されているので面白いのですが、「梅干白玉たいやき」ではその品種は使っていません。

 使っているのは、京都府の南の地域にある「青谷梅林」で生産されている「城州白」という品種の梅です。有名な品種よりさらに実が大きく皮が薄いので、和菓子の材料などに使用されています。ただし、生産地が青谷梅林とそこから持ち出して栽培している滋賀県の一部だけなので、生産量が少なく、同じ京都府内でも知らない人がいるくらいマイナーな品種です。

青谷梅林写真

 青谷梅林(ネット上の写真をお借りしました)

・梅酒や梅ワインの原材料としても知られています

 とはいえ、知っている人には評価が高いこの梅について少し紹介します。

 まず、梅酒が好きな人は「城州白」という名前は知らなくても「青谷の梅なら聞いたことがあるのではいでしょうか。青谷梅林の地元の「城陽酒造」さんが城州白を使って生産されるこの梅酒は販売店を限定していることもあって大変な人気となり、一時はプレミアムが付いて取引されているくらいでした。もちろん、現在も変わらぬ人気を保っておられます。

 

 また、ワインの原料にも使われています。京都府の北部にある「丹波ワインさんは、京都とその付近にしかワインを卸していないので知らない方も多いかもしれませんが、地元では有名な会社です。この丹波ワインさんが、自社農園の葡萄を使ったワイン以外にもうひとつ作っているのが梅を原料にした「梅わいん」です。梅の風味が強く出た飲みやすいワインで人気になっています。

この梅ワインにはランクがふたつあります。普及価格のものは和歌山県の有名なブランド梅を使っているそうです。そして価格が高い方の梅ワイン「京都青谷梅わいん」には、青谷梅林の城州白が使われています。

 

・老舗和菓子店は自前で栽培しています

先ほど、青谷梅林と滋賀県の一部で栽培されていると紹介したのは、和菓子の老舗「叶匠寿庵」さんが自社で栽培されているからです。もともと青谷梅林の城州白を仕入れて使われていたと聞いていますが、自社で梅林を作り、そこで栽培するようになったようです。このことからも、城州白のポテンシャルの高さがうかがえます。

なお、土地勘がない方のために付け加えると、京都府の南部は滋賀県と非常に距離が近く、青谷梅林と叶匠寿庵さんの梅林がある「寿長生の郷は車で30分もかからない距離。なので気候も似ていて、栽培ができたのでしょう。

 

 加えて、青谷梅林の「城州白」は梅干にも向いています。

 それほど生産量が多くないので、梅干は昔ながらの塩分が強く、酸味も強いものがほとんどです。当店のように甘いものと合わせるには、その味の強さが個性になるので、非常に良い素材だと感じています。

 

梅干写真


■白玉にかなりの梅干を練り込みました

 上でも紹介している通り、「梅干白玉たいやき」は、つぶあんに直接梅干は入れていません。その分、白玉に対しては梅干の味が主張できるよう、かなりの量を入れています。

 最初は白玉粉をこねる際、種ごと梅干を入れてこねてから種を取り出します。白玉の中に梅干が均一に行き渡るようにした上で、さらに粗く刻んだ梅干を混ぜ、今度は果肉が散って、食べる場所によって味に変化が出るように仕上げます。

 

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■月替りたいやきの中でも特殊です

 いつも説明させていただいていますが、つぶあんの新しい可能性を追求することも月替りたいやきを出す理由のひとつです。

 新しい餡を作る際に必要なのはつぶあんが持つ甘さ以外のベクトル(方向)の個性を持った素材です。酸味や苦み、食感、香り等の個性を持つ様々な素材を試し、使ってきました。

 その中で、「梅干白玉たいやき」が持つ塩味は、これまで使ってこなかったベクトルです。隠し味としての塩分ではなく、甘さの中の塩気さを楽しむことができる、たいやきの幅が大きく広がった気がしています。

 

■冷めても美味しい、いえ少し冷ましてからの方が美味しいかもしれません

 たいやきは、焼きたての味が最高で時間が経つごとに味が落ちていく、ともえ庵では基本的にそう考えています。ましてや白玉の入ったたいやきは、時間が経つと白玉の水分が皮に出てしまうので、可能な限り10分以内に召し上がってくださいと案内してきました。

 しかし、この「梅干白玉たいやき」に関しては少し違うかもしれません。というのも、焼き上がってから20分程度時間が経ち少し冷めてから食べると、より梅の味が際立って美味しいのです。人は温度が高い場合と低い場合に味を感じにくく、常温に近くなると味が感じやすくなるからだと思われます。

 パリッとした皮の食感は損なわれますが、この違った美味しさもぜひ試していただければと思います。

 

■少しずつ知ってもらえることを期待しています

「梅干白玉たいやき」は少しチャレンジングなメニューかもしれません。ですから、すぐに人気にならなくても長い時間をかけて少しずつ知ってもらえればと思っています。

 このブログ記事を書いている本日は「ずんだ白玉たいやき」の最終日なので、たくさんのお客さんにお越しいただいています。しかし、ずんだも最初はそれほど人気が出ないメニューでした。それでも、食べて下さった方がリピートして下さり、少しずつ売上が伸び、3年目の今年ようやく人気があると言えるメニューになりました。

 同じようにゆっくりと成長することを見守りたいと考えています。

 

「梅干白玉たいやき」をよろしくお願いします。

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