平成307月豪雨災害で被災した呉市への応援の募金を新しい形で続けることになり、すでに85日より始めています。

 たいやき ともえ庵の店頭で、アニメ映画『この世界の片隅に』とのタイアップ商品「すずさんらむね」を販売し、その売上を全額呉市の支援に寄付し、同時に呉市の観光や物産のPRも行うという取り組みです。ライセンス料は映画の片渕須直監督のご厚意で無料、ラムネの代金は呉市の中元本店が負担してくださり、たいやき ともえ庵が提供する形で実施します。

今度は201885日(日)から10月末まで、規模は小さくなりますが細く長く続けます。

すずさんらむねと呉の港湾風景小

■「すずさんらむね」とは ~アニメ映画『この世界の片隅に』について~

 まず、取り扱う「すずさんらむね」について説明します。

「すずさんらむね」は、アニメ映画『この世界の片隅にの主人公、すずさん(北條すず)が描かれたラベルのラムネです。

 

すずさんらむねアップ小


 大ヒットしたこの映画をご存知でしょうか。こうの史代先生の同名の漫画を原作とした戦時中の生活を描いた作品です。

 内容については改めてここで紹介する必要はないと思います。まだご覧になっていない方にはネタバレにもなりますので。でも、見ると「良い映画」ってこんな作品を言うんだろうなと感じ、人にも勧めたくなる映画です。

 

201611月に公開されたこの映画、実はもうすぐ2年が経とうとしていますが、公開以来欠かすことなくどこかの劇場で上映されています。DVDが発売され、ネットフリックス等の動画配信サイトでも見ることができる、地上波テレビでも放映した、それでも劇場に足を運んで見たくなる映画なのです。

 公開された時期が、日本のアニメ映画でも稀に見るヒット作品『君の名は。』と重なっていたこともあり、その時には派手に報道されることはありませんでしたが、その年の国内の映画賞のアニメ部門を総なめにしたのはこの映画でした。

 

DVDパッケージ

 もうひとつ、この映画について知って欲しいことがあります。それは、応援する数多くの人々の力で実現した映画だということです。

 こうの史代先生の原作を見て映画化を企画した片渕監督は、その時点では映画化するだけの予算のあてがまったくない状態だったそうです。それでも、映画の舞台である呉市で監督が映画化を訴え続けたところ、地元の賛同が集まり、呉市や広島市の行政なども巻き込んだ、「この世界の片隅に」を支援する呉・広島の会が組織されました。聞くところによると、こうした地元への働きかけや、映画のための史実の取材のために広島や呉に通う際、片渕監督は資金を切り詰めて高速バスを使われていたそうです。

 さらにこの活動を加速したのがインターネット上で賛同者から資金を募るクラウドファンディングです。地元の賛同者、片渕監督のこれまでのファン、こうの史代先生のファンなど多くの方がクラウドファンディングに応募した結果、全国3374人の支援者から、39121920円の支援金が集まりました。この支援者の数は日本のクラウドファンディング史上1位、金額も映画では1位という結果だそうです。

 この資金を元に企業スポンサー等を募るためのパイロットフィルムを製作し、製作員会を結成、最初は少数の映画館での上映でしたが、口コミで人気が高まり、全国的な上映がなされるに至りました。

 

 今年(2018年)12月には『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が上映されることが発表されています。これは続編ではなく、映画化に際して上映時間の都合から割愛せざるを得なかったエピソードを盛り込んだ「完全版」です。

さらにいくつもの片隅にポスター画像

 

■「すずさんらむね」を作っている中元本店について

「すずさんらむね」を作っている中元本店は、呉市三条に本店を構える飲料と漬物のメーカーです。従業員数が20人程度と規模は小さいのですが、独自の商品と地元の根強いファンに支えられている“地域の優良中小企業”です。

 中元本店は大正14年にラムネの専業メーカーとして創業しました。当時は日本各地にラムネのたくさんのラムネのメーカーがあった時代で、そのひとつとして誕生したのです。「トビキリラムネ」のブランドで販売されたラムネは、昭和初期には呉市とその周辺部では誰ものが知るものとなっていました。

 

 呉海軍工廠で建造された戦艦大和の艦内でラムネが製造され飲まれていたことは知られていますが、その際にラムネの製造技術を指導し、材料を納品していたのが中元本店なのです。(そのあたりの事情は過去のブログ記事「ともえ庵のラムネに詳しく載せています)

 昭和初期から呉で愛され続けている商品ということで、映画とのタイアップによる商品として「すずさんらむね」が生まれました。

 

 中元本店が創業した大正14年は、すずさんが広島市江波で生まれた年です。呉に嫁いできた頃には「トビキリラムネ」は呉市内で誰もが知る飲料になっていましたから、きっとすずさんもどこかで口にしたのではないでしょうか。


■呉市の中元本店は「すずさんらむね」で表彰を受けています

 なお余談ではありますが、この「すずさんらむね」はすでに一度話題になっています。

 経済産業省がクールジャパン戦略の一環として行っている「アニものづくりAWARD」という表彰があります。アニメ作品とものづくりのコラボレーションを進めるため、優秀な取り組みを表彰するという制度なのですが、2017年に開催された「第1 アニものづくりAWARD」のコンテンツコラボ部門で中元本店が銅賞を受賞しています。

 →1 アニものづくりAWARD 入賞者

 第1回ということもあってか、エントリーされた製造業は、ほぼすべてが誰もが知る大企業ばかり。コンテンツコラボ部門でも金賞、銀賞はサントリービール、サントリー食品、受賞に至らなかった企業もやはり誰もが知る大企業や団体、自治体(県)などでした。その中で中小企業である中元本店が受賞したことが、ひとつの快挙と話題になったのです。

 

■「すずさんらむね」で呉市を応援! のきっかけ

 今回の取り組みは、偶然の出会いから生まれたものです。

 平成307月豪雨災害で被災した呉市のニュースを見て、もともと呉市の事業者の方と親しくさせてもらっており、呉市からレモン果汁や飲料を仕入れているたいやき ともえ庵として何かできないかと始めたのが、「かき氷とラムネで呉市を応援!」というキャンペーンでした。呉市に関連する5品のメニューの売上を全額寄付するという取り組みです。

 

・ブログ記事「平成307月西日本豪雨災害の被災者支援のため5つのメニューの売上の全額を寄付します
・ブログ記事「平成30年豪雨災害の呉市への募金プロジェクトが終わりました(集計、使途報告)

 

詳細はブログ記事のとおりですが、この取り組みがちょうど阿佐ヶ谷のミニシアター「ユジク阿佐ヶ谷」さんで『この世界の片隅に』が上映されるタイミングに重なったことで、ファンの方が話題にして下さり、それを見て片渕監督が店に来てくださいました。

聞けば、監督の事務所とともえ庵は歩いて10分もかからない距離なのだそうです。しかもさらに奇遇だったのは、映画のファンの方が話題にして下さっているのを見て、中元本店から装飾用に「すずさんらむね」を1セット送ってもらい、それを店頭に飾りつけしているタイミングでのご来店でした。

 その場で、何か協力できることがあればとのお申し出をいただいたので、「すずさんらむね」を今後の募金のために使いたいという話をさせていただくと、ライセンス料を無料にすることをご快諾いただきました。

 

■「すずさんらむね」で長く続く取り組みを考えました

 片渕監督がライセンス料を無料にするように映画の製作委員会に言って下さるという話を中元本店さんに伝えたところ、「監督がそこまでして下さるなら、うちは、ともえ庵さんで販売するすずさんらむねに限定してラムネの代金を無料にします」とのお返事をいただきました。

 とはいえ、残念ですがラムネの売上金額はそれほど大きいものではありません。ですから、「すずさんらむね」を使った募金に合わせて、呉市のPRを行うことにしました。

 

 現在も呉市の一部では災害からの復旧作業が続いていますが、中心部や多くの観光拠点は豪雨の被害が少なく、復旧して営業されています。しかし、JR呉線や高速道路クレアラインがまだ復旧できていないことで観光客が激減し、経済が停滞している状況に困っているそうです。

 ともえ庵では少しでも呉市の活性化につながるように、「すずさんらむね」をご購入の方や募金をしていただいた方に呉市の観光やふるさと納税の案内をお配りすることにしました。

 少し話が前後しますが、この取り組みについては、最初の募金を呉市にお届けに上がった際に呉市長に説明し、公認の取り組みとして活動しています。ですので、お配りしている案内は呉市から提供いただいています。

 

 また、やはりこの取り組みにご関心をもっていただいた大和ミュージアム(呉市海事歴史博物館)の統括、上元さんからは配布する大和ミュージアムの資料と一緒に大和ミュージアムの招待券、戦艦大和のポストカード、こうの史代先生のイラストが入ったチケットホルダーを各10枚ご提供いただきました。こちらは「すずさんらむね」をご購入された方に差し上げます。

 また、呉市の別の部署からは「すずさんらむね」に関連して映画のロケ地マップを提供していただく話をいただき、8月下旬からは同時に配布させていただこうと考えています。

 

 このように色々な方からのご厚意や想いを合わせて提供できる場としてともえ庵が機能できればと思います。そして、参加する店や会社、組織があまり無理をせずに長く続けられる取り組みにできればと考えています。

 今回の取り組みは1031日を区切りにしますが、呉市の状況などを見てそれ以降も継続できればと思います。

 

■呉市の商品を購入という形でも応援してください

 以前の呉市への募金の際のメニューも引き続き販売しています。

・ラムネのかき氷

・ラムネ

・広島レモネード、

・げんまい飲料

 

「広島大長レモンのかき氷」だけはレモン果汁の在庫が尽き、現地の搾汁工場が豪雨災害の被害を受けたことから今期の販売を終えましたが、それ以外は継続しています。

 残念ながら、これらは今回は募金の対象にはしていません。小さな店なので、あまりに広い対象を全額寄付すると経営が成り立たなくなるからです。ご了承ください。

 ただ、これらの商品を購入することで、呉市の中元本店やそこからの仕入先である農家の方などにそれぞれの仕事を還元することができます。寄付ではありませんが、買い物を通じて応援することにご参加下さると幸いです。

 

飲料三種類

 このような形で取り組んでいる「すずさんらむねで呉市を応援!」の取り組み、ぜひ参加してみてください。

 なお、最近、お客さんに言われて気付いたのですが、「すずさんらむね」の元になっている呉の「トビキリラムネ」は、一般に売られているラムネに比べて味が濃いようです。糖度が高いという意味ではないのですが、昔ながらの風味が残っているのでしょう。そんな点からも、すずさんが飲んだかもしれないラムネ、お楽しみください。