たいやき ともえ庵では711日から8月初旬にかけて「信州あんずフェア」を予定していました。ところが、フェア開始直後に平成307月豪雨災害が起こり、被災地の広島県呉市支援への支援の募金集めを始めたため、あんずの印象が薄くなってしまいました。

 実は、フェア開始直後に情報を出そうと、ブログ記事を作成していたのですが、被災地支援を優先したため、アップすることができていませんでした。信州あんずの在庫が尽きる前に紹介したいと思います。

あんず氷小


 以下がフェア開始時に作成した「信州あんずのかき氷」の記事です。

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 ともえ庵では今年(2018年)から、長野県産のあんずを使った「信州あんずの氷」を始めます。

 特に今年は、昨年発売の月替りたいやき「信州あんずたいやき」と、先月発売の「阿佐ヶ谷練乳餅 信州あんず」を合わせて三種のメニューで「信州あんずフェア」として提供させていただきますので、あんずの美味しさを余すことなく楽しんでいただけると期待しています。

 

●あんずは日本人の生活に密着した果物

 あんずは、古くから和菓子に使われてきた日本人にはなじみが深い果物です。あんずの甘露煮や干しあんずの形で庶民にも親しまれてきました。

昔ながらの幕の内弁当などには、あんずの甘露煮が添えられていました。特に、関東の人は「あんずボー」などの駄菓子でも馴染んでらおれると思います。一旦、干しあんずにすると保存性が高まることも、こうした使われ方をされてきた理由かもしれません。

 また、あんずを意識せずに多くの人が食しているのが杏仁豆腐ではないでしょうか。あんずの種を割って取り出した核の部分は仁(じん)と呼ばれ、漢方薬などに用いられていますが、これを使って作っているのが杏仁豆腐です。あんずの仁なので杏仁と言うわけです。なお、杏仁豆腐は「あんにんどうふ」と読まれることが多いのですが、正しくは「きょうにんどうふ」です。

 

●果物としてのあんずを見かける機会はあまりありません

 ただし、生食となると食べる機会は多くないのではないでしょうか。果物屋さんで売っていない訳ではないのですが、店頭に並ぶ時期が短いことや、並んでいてもあまり目立たないことから、意識しないと見かけない果物になっています。

 ただ、大きな産地のひとつ長野県などでは生活に普通に密着した果実だそうです。今回の「信州あんずフェア」の三種のメニューは、長野県出身のスタッフが原料を仕入れて試作し、完成させたのですが、彼女曰く「あんずを買ったのは初めて」だそうです。聞いてみると、「あんずは、学校帰りにそこらへんに生っているのを勝手に採って食べるものでした」とのことです。しかし、いくら大産地とはいえ、あんずが自生している訳ではないので、おそらくそれは、“採って”いたのではなく、“盗って”いることに自覚がなかったのだと思います。

信州あんず

 

●信州あんずたいやき、阿佐ヶ谷練乳餅 信州あんずについて

 ともえ庵であんずを使うのは今回が初めてではありません。昨年(2017年)の夏には、月替りたいやきとして「信州あんずたいやき」を出していますし、今年は既に「阿佐ヶ谷練乳餅 信州あんず」を出しています。

 ですので、あんずについては以前のブログ記事「信州あんずたいやき」 http://taiyaki-tomoean.blog.jp/archives/71811781.html でも紹介しています。

 つぶあんの中に軽くシロップ漬けにした信州あんずの半割を二つ挟んだたいやきは、もちろんともえ庵のオリジナル、あんずの風味とほど良い酸味を楽しむことができる味になっています。

 また、今年から始めている「阿佐ヶ谷練乳餅 信州あんず」は、練乳餅のやさしい甘さとあんずの酸味が合い、見た目にもきれいな仕上がりになっています。

 

「信州あんずたいやき」のブログ記事内では、「信州あんずたいやき」に続いてかき氷も発売予定としていますが、昨年はかき氷にすることができず、今年に持ち越しになってしまいました。

 かき氷にすることができなかったのは、酸味が足りないと感じたからです。あんずの魅力である爽やかな酸味、特に冷たいかき氷になるとはっきりした味が求められますが、昨年のあんずは、シロップ漬けにしてから時間が経ったこともあり、酸味が抜けてしまっているように感じたので、かき氷の発売は中止したのです。

 

●今年からあんずの種類が加工用の「昭和」種になりました

 そこで今年は、使うあんずの種類を変えました。昨年までは生食もできる品種「信州大実」を使っていたのですが、今年からは加工用にのみ使われる品種「昭和」を使うようになりました。「信州大実」はその名の通り実が大きいのが特徴ですが、生食もできる甘さが特徴、今年から使う「昭和」は最初から加工用として栽培されている酸味が強い品種です。

 これを使うことでたいやきだけでなく、かき氷や阿佐ヶ谷練乳餅にも使えるものとなりました。

 あんずの種類は変わりましたが、昨年と同様にまとめて仕入れ、半割にして種をとってから軽くシロップ漬けにして使っています。


信州あんずシロップ漬け

 

●浸み込むシロップにどう仕上げるかに悩みました

 あんずのかき氷は、試作段階でかなり悩まされました。というのは、あんずをシロップにするとピューレのようになってしまうのですが、これが氷に浸み込まず、氷の上に乗ってしまうのです。

 最近はこってりしたソース上のシロップや泡状のシロップを氷の上に載せるのが流行っていますが、ともえ庵では口の中ですぐに消える繊細な氷に合う浸み込むシロップを使うことにしているので、ピューレ状のものは向かないのです。

 そこで、あんず漬け込み、あんずの風味が出たシロップと、あんずの果肉で作ったピューレを別々に使うことにしました。やさしい甘さのあんずシロップを氷に浸み込ませ、濃厚でしっかりとした酸味のあるあんずピューレをトッピングすることで、ともえ庵が目指す口融けとあんずの美味しさの両方が楽しめるようになりました。

 盛り付けは、器の底から順に、あんずピューレ、氷、あんずシロップ、あんずピューレ、氷、あんずシロップ、あんずピューレと七層になり、かなり手間がかかるものになりましたが、そのおかげか最初に考えた理想に近い味に仕上げることができました。

 写真で見ると、白い氷の上にあんずのピューレ状のあんずが乗っているように見えますが、実は白い部分にはあんずシロップが浸み込んでおり、それだけでも美味しく仕上がっています。

 

あんず氷アップ小

 

 今回は信州あんずを楽しんでいただけるようにたいやき、かき氷、阿佐ヶ谷練乳餅の三つの形で提供しています。販売期間を設定していますが、漬けこんだ信州あんずの在庫がなくなるとそこで終了ですので、ぜひ、早めにお試しください。


図1