2018年は211日から39日までの月替りたいやきとして「きざみ生姜たいやき」を出させていただきます。

 後で詳しく説明しますが、もともとともえ庵が「月替りたいやき」を作るきっかけとなったのがこの「きざみ生姜たいやき」、紅玉りんごたいやきも広島レモンたいやきも酒粕たいやきも、よもぎ白玉たいやきもあんずたいやきも、このたいやきがなければ存在していなかったかもしれません。

 先月の「酒粕たいやき」同様、ハマる人は病みつきになる特徴的な味です。ぜひお試しください。 

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金色に見える砂糖漬けにして刻んだ生姜。これをともえ庵のつぶあんに合わせます。


■味の存在感は抜群の生姜

「きざみ生姜たいやき」は、つぶあんの中に細かく刻んだ砂糖漬けの生姜が入ったたいやきです。

生姜というと辛いだけというイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、ジンジャーエールなどに使われているように独特の風味が魅力です。ともえ庵の甘さを抑えたつぶあんと合わせた際の、風味と辛味と優しい甘さのとりあわせは今までに味わったことがないものだと思います。

 断面を見ると、ほとんど生姜が見えないと思います。ですが、砂糖漬けにしても生姜の存在感は相当なもの。目立つほどに入れると生姜が味を引っ張り過ぎてしまいます。何度も分量を変えて試作して、見た目には目立たない程度の分量に落ち着きました。それでも、最初のひと口から生姜の存在が意識せずにはいられない仕上がりになっています。

 

生姜たいやき断面

 断面部分の写真。ほとんど生姜が目立ちませんが、これくらいがちょうど良い味わいになります。


■ちょっとだけ生姜について記します

生姜の原産地は熱帯アジア地域と推察されていますが、厳密には分っていません。ただ、インドや中国では紀元前から利用されていたとの記録が残っています。

その後、2000年ほど前にヨーロッパに伝わり、さらに15世紀以降にアメリカに伝播したといわれているそうです。香辛料としての役割に加えて薬用としても用いられたことから、中世のヨーロッパでは生姜の需要がコショウに匹敵するほど高まり、高価で取引されたそうです。

現在でも、インドや中国、ネパール等で栽培が盛んになされています。

 

日本には、3世紀ごろ中国から伝わり、奈良時代には栽培されていたという記録が残っています。現在、日本国内では高知県産が圧倒的に多く全体の4割以上を占めており、次いで熊本県、千葉県、鹿児島県、宮崎県と続きます。もともと熱帯の植物ということもあり、温暖な南国がたかい生産高を占めています。

なお、秋に収穫されてすぐに出荷される色白のものを「新生姜」、貯蔵した後に出荷されるものを「古生姜、ひね生姜」と呼びます。また、甘酢漬けなどにされる夏のうちに収穫され、赤い茎の部分が付いているものも「新生姜」と呼びます。

 

生姜として食用にしているのは生姜の根の部分ですが、根茎の部分は生姜(しょうきょう)と呼ばれて漢方の生薬として使用されています。根の部分についても、代謝を高めて体温を上げる効果が認められている他、様々な薬効があるとされています。


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 夏の時期の新生姜

■もともと生姜を使うのが得意な店です

 実は、たいやき ともえ庵はもともと生姜を使うのが得意な店です。この「きざみ生姜たいやき」を発売する以前、以後を含めてこのようなメニューを取り扱っています。

・かき氷:生姜のかき氷、きざみ生姜と自家製練乳のかき氷、かぼす生姜のかき氷

・暖かい飲み物:かぼすの生姜湯

 

なので、上に書いたような生姜の効用については日々感じてきました。夏場に出している「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」は、生姜の作用でかき氷なのに体が温かくなるという面白いものになっています。

参考:「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷

 

「きざみ生姜たいやき」も、食べてからしばらくすると体が温まる感じがしてきます。個人差はありますが、中にはじんわりと汗ばんでくるように感じる人もいます。

 

■実は阿佐ヶ谷に来る前に試作は完成していました

 昨年から月替りたいやきとして出させていただいている「きざみ生姜たいやき」ですが、実は四年前、阿佐ヶ谷に移転する前の中野店時代に試作は完成していました。実際にメニューにしたのは昨年度ですから三年くらいメニュー化せずに置いておいたことになります。

 

 もともとは、上でも書いたように生姜を使ったかき氷を売り出したことがきっかけです。かき氷に使う生姜のシロップは、スライスした新生姜を数時間砂糖に漬けて出てくる水分から作ります。その水分を採った後の生姜をドライフルーツのようにしようと、さらに砂糖を加えて1か月以上漬けこんで味見をしたところ、シャキシャキとした感じがなくなり、クニクニとした面白い食感と味に仕上がったので、「きざみ生姜たいやき」と「きざみ生姜と自家製練乳のかき氷」に使うことにしたのです。

「きざみ生姜たいやき」は、試作して何人かのお客さんに食べてもらったところ、非常に好評でした。でも、その時はまだ暑い夏の時期、ただでさえ熱いたいやきが売れない時期に、食べたら汗ばむ生姜入りのたいやきを食べる人はいないだろうと、発売を冬の時期に先延ばしにしたのです。

 その冬にはメニュー化されるはずが、ともえ庵が中野から阿佐ヶ谷に移転することになり、メニュー化はさらに先送りになりました。阿佐ヶ谷への移転後は、お客さんが増えたことや、店の体制が変わったこともあり、しばらくたいやきのメニューを増やすことができない状態が続き、二年後にようやくメニュー化することになったのです。

 

 ところが、いざメニュー化する段階で、また事情が変わります。確かに「きざみ生姜たいやき」は美味しいのですが、その他にも「紅玉りんごたいやき」などのメニュー候補が次々と出てきたのです。

 その時には、「たいやき」、「白玉たいやき」、「きざみ生姜たいやき」を定番メニューにして、季節メニューとしてその他のたいやきを提供しようと考えたのですが、一丁焼きでたいやきを焼くともえ庵の方法では、同時に焼けるのは三種類が限界でした。それ以上になると、中身の取り違えが起きてしまいます。

 そのため、「きざみ生姜たいやき」を定番にすることを諦め、「月替りたいやき」のひとつとして季節メニューにすることにし、ようやく発売したのです。

 

 ともえ庵によく来ていただくお客さんはお気づきだと思いますが、「月替りたいやき」の袋には、それぞれのメニューに合わせたスタンプが押してあります。袋は一度に大量に印刷するため、季節メニューでは使い切ることができないからです。

ところが、写真を見ていただくとわかるように、「きざみ生姜たいやき」は専用の袋があります。普通の「たいやき」や「白玉たいやき」と同じ花札をモチーフにした袋です。

定番にするつもりで袋まで作りながら、このような事情から季節メニューになった名残がこの袋です。

 

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 月替りたいやきの中で、唯一の印刷した袋です。

 とはいえ、一度は定番にしようと思ったほどのものですので、店として自信を持っている味であることはお解りいただけると思います。

 

■他のたいやき以上に手間がかかります

 正直に話してしまうと、このきざみ生姜たいやきの仕込みは他の月替りたいやきより簡単です。生姜を薄くスライスして長期間に渡って砂糖漬けにするのに時間は要しますが、砂糖漬けが出来上がるまでは単に待っているだけですから、手間はかかりません。また、もともと食料を保存する手段でもあった砂糖漬けは日持ちがするので、他の材料に比べて鮮度を気にする必要がないのも楽なところです。また、きざんだ生姜をあらかじめつぶあんに合わせて使うので、焼く動作も通常のたいやきと同じで済みます。

 このように一見楽そうですが、実際に焼いてみると大きな問題がありました。生姜の風味が強すぎるのです。もちろん、風味が強いからこその味なので、そのこと自体には問題はありません。しかし、一度「きざみ生姜たいやき」を焼いたハシ(たいやきの型)には生姜の風味がついてしまうため、次に普通のたいやきを焼くことができなくなるのです。

 そのため、「きざみ生姜たいやき」を焼くためのハシは専用のものを決めて、他のものと混同しないように別に管理しなくてはなりません。たいやきを焼く際にはハシを事前に温めておかなくてはならないのですが、「きざみ生姜たいやき」用のハシは焼き台を使わず、別のコンロを使って温めています。

「きざみ生姜たいやき」は一度にたくさん焼くことができません。もともと、白玉たいやきや他の月替りたいやきと同じように、注文を受けてから焼くのですが、このように専用のハシを使っているので、注文が集中した場合にはかなりお待たせしてしまうことも起こりますので、ご理解ください。

 繰り返しになりますが、生姜好きの人はハマること請け合いの味。寒い日にはぜひ「きざみ生姜たいやき」をお試しください。


生姜たいやき