うちのかき氷の中で一番の売れ筋はいちご系、「生いちごのかき氷」、「生いちごと自家製練乳のかき氷」です。とはいえ、それほどいちごに力を入れていないので、「生すいかのかき氷」などが一番になって欲しいのですが、初めて注文される際にの人気が高く、リピートもそこそこしてもらえるいちご系をなかなか抜くことができません。

生いちごの氷2小
生いちごのかき氷

■いちごには熱を加えません

 いちごは、果物屋さんの店頭に並んでいる時期は、その時期に美味しい種類を購入しています。ただ、6月中旬以降はいちごの入手ができなくなりますので、千葉の農業生産法人と契約し、冷凍保存してもらったものを少しずつ送ってもらい、解凍して使っています。

そのまま使うものであれ、冷凍ものであれ、うちのいちごシロップには、基本的に熱を入れていません。なので「生いちご」と表現してきましたが、冷凍のいちごに「生」という表現を使うことに少し抵抗を感じるので、今年(2017年)からは、冷凍いちごの時期には単に「いちごのかき氷」という表現に改めることにしました。

 本音では、果物屋さんの店頭にいちごが出ない時期にはいちご系のかき氷を出したくないと思っています。ところが、「いちごがないと子供が泣く!」のです。商店街にあることもあり、お子さん連れのお客さんがどうしてもいちごを欲しがられるのです。

実はかき氷を始めた最初の年は、7月からのスタートだったこともあり、メニューにいちご系のものを置かなかったのですが、かなりのご要望をいただいたので次の年から揃えるようにしました。

 

いちごハウス写真
仕入先の農業生産法人のいちご栽培の様子(千葉県)

いちご写真
上の写真で作られているいちご


■いちごの種類

 いちごの種類は時期によって変わります。うちの場合、かき氷は5月から始まりますが、その時期には味も色も濃い「あまおう」を使っています。

ちなみにこの「あまおう」、最初は「甘王」だと思っていたのですが、ひらがなが正式名称。「あ:赤い」、「ま:丸い」、「お:大きい」、「う:美味い」という意味だそうです。どうして“丸い”を強調するのか不思議に思ったのですが、もともと丸いいちごは甘いというのが果物屋さんの常識なのでそうなったそうです。じゃあ、“甘い”でいいだろう、というツッコミは野暮ってものです。

「あまおう」の季節が過ぎると「とちおとめ」、冷凍になると「あきひめ」と「紅ほっぺ」を使っています。いちごに関してはまだまだ研究中でもあります。

 

■いちごをブレンダーにかけ、甘さと濃さを調整、それだけです

いちごは、ヘタをとってブレンダー(ミキサー)にかけ、砂糖ベースのシロップで甘みを調整します。他の種類のかき氷のシロップでも同じですが、氷にシロップをかけるのは、水で薄めるのと同じことなので、もともとの果物の甘さだけではぼけた味になってしまうため、ここで甘みを加えることは必須です。

さらにいちごのシロップに関しては、少しだけ水を足して濃さも調整しています。いちごは水分が少ないので、そのままシロップにすると氷の上に乗ってしまい浸み込まないシロップになってしまうからです。

以前にも書いたとおり、ともえ庵は「かき氷のシロップは氷に浸み込むもの」という考えですので、濃さの調整は重要なのです。

なお、シロップに水を加えて濃さを調整しているのは、現在のところいちごだけです。他の果物は水分が多いので、そのままで氷に浸み込むシロップに仕上がります。

 

 いちごをブレンダーにかけ、甘さと濃さを調整する。これでシロップの完成です。上でも書いたように熱は一切加えないので、作った日と翌日しか使えませんが、その分、いちごのフレッシュな味と香りが楽しめるシロップに仕上がります。

 

 いちごのシロップの場合、濃さを調整しても、他のシロップに比べると氷への浸透が少ないので、盛り付けの際にも、まず器の底にシロップを入れ、その上に氷、シロップ、氷、シロップと二層で盛り付け、シロップと氷の量のバランスをとっています。

 

■熱を入れないので色は薄くなります

 いちごのシロップ、というと真っ赤なものを想像されたと思います。でも、いちごをかじってみるとわかりますが、外側は真っ赤でも中は真っ白、当然ながらブレンダーにかけると色はピンク色になります。「あまおう」のように中まで赤い種類のいちごの場合にはかなり赤く仕上がりますが、中が白いいちごの場合にはピンク色が限界になります。

 いちごジャムなどは見事な赤色になっていますが、あれは熱を入れる(煮る)ことで赤みが増しているからです。

 

 以前にトマト農家の方から聞いた話ですが、農産物直売所でトマトだけは古いものから順に売れるそうです。他の農産物は朝に直売所に持ち込み、売れ残った場合には夕方に引き取るか廃棄します。ところが、トマトだけはそのまま売り場においておくと翌日には赤みが増して、当日に持ち込んだトマトよりも先に売れていくそうです。

 うちでも阿佐ヶ谷練乳餅の生いちご味を発売した際に気づきましたが、「赤みが強ければ強いほど売れる」のです。

 

 その点からは、なんとかもっと赤みのあるシロップに仕上げたいのですが、現在の作り方では難しいところです。熱を入れたシロップと生のものを合わせる、という方法もあるとは思いますが、見かけを良くするために味を落とすというのはどうも納得できないので、今のところ、色味については妥協するしかないと諦めています。

生いちご氷小

 生いちごのかき氷(大)、どうしても赤みが薄くなります

生いちごの氷小
「生いちごのかき氷(小)」の一番最近の写真、上より赤みが濃いのですが、やはり実際に見ると真っ赤ではありません。
なお、写真撮影の際に少し張り切って盛り過ぎ、これでは食べる時に崩れます。(盛り過ぎているのは写真ではなく”氷”です)


■本音ではいちご系のかき氷はあまり売れてほしくありません

 正直に書いてしまうと、いちごのかき氷はあまり売れてほしくありません。というのは、かき氷が売れる季節のいちごは、旬でなくあまり美味しくないからです。いちごが美味しいのは2月くらいからせいぜい5月の初めまで、うちのかき氷の時期とほとんど重なっていないのです。

熱を入れないことでそこそこの美味しさを保ってはいるつもりですが、5月後半以降のいちごの味は旬とは比べ物になりません。冷凍いちごについても、やはり味が落ちることは避けられず、店として納得ができるものを出しているとは言い難い状況です。

 とはいいつつも、やはり注文が多いいちご系のかき氷。おすすめを尋ねてもらえれば、いちごとは言わないのですが、最初から「生いちご」や「生いちごと自家製練乳」と言われると他のものにしろとは言えません。

いちごという果物の魅力なのか、“氷いちご”という言葉がもはやお客さんの潜在意識にまで刻み付けられているのか。旬でない時期のいちごのかき氷が、旬の素材を使ったかき氷や、工夫を凝らした他所とはまったく違うかき氷より売れていくことに、少し納得できないものを感じながらかき氷を作っています。


生いちご練乳氷小
生いちごと自家製練乳のかき氷(小)、これも盛りすぎ・・(しつこいようですが、写真は盛っていません)
 

■それでも食べてほしい「夏いちご」

 少しネガティブなことを書きましたが、決していちごが嫌いな訳ではありません。むしろ、旬の時期のいちごは本当に美味しいので、阿佐ヶ谷練乳餅には使っており、かき氷に季節が合わないのを残念に思っているくらいです。なので、うちでかき氷が始まる5月初旬にはぜひ「あまおう」のかき氷を食べていただきたいと思っています。

 

 そしてもうひとつ、いちごのかき氷を食べて欲しい時期があります。北海道や長野で作られている「夏いちご」が出回る7月~8月上旬です。「夏いちご」は他のいちごに比べ、粒が小さく、甘みに欠けると言われています。その割に値段が高いので、これまであまり使おうと思っていなかったのですが、昨年、どうしても冷凍いちごが不足して、急遽仕入れてみたら、びっくりするくらい美味しかったのです。

「夏いちご」の特徴はいちごらしい酸味の強さ、これがかき氷には最も適しているのです。潰してシロップにするので、粒の大きさは関係ありません、また甘みの少なさは砂糖ベースのシロップで調整するので、大きな問題にはなりません。むしろ、砂糖の甘みに負けない個性的な風味と酸味こそがかき氷に適した果物、「夏いちご」その条件を満たしているのです。

 このあたりは、以前に紹介した「夏みかんのかき氷と同じ理屈です。

 

 値段が少し高いのと、普通のいちごのかき氷と区別するため、「夏いちごのかき氷」は別メニューで出させていただく予定ですが、食べる価値は十分にあるのでぜひお試しください。

 

 

 魅力ある食材だけに、楽しみも悩みも多いいちご、これからも工夫していきたいと思います。